実はハートウォーミングなファミリー映画の『ヴィジット』(ネタバレ)

あらすじ

休暇に田舎の母の実家に行くことになった姉弟。長い間母と疎遠だった祖父母はふたりを温かく迎え入れる。しかし、そこで過ごしているうちに徐々に祖父母の奇行が目立ち始め・・・。ドキュメンタリータッチで描かれる、姉弟の恐怖の一週間。

家族の絆の物語が下敷きになっているサイコスリラー

サイコなB級アメリカ映画を観たくてなにげなく選んだこの映画。思った以上にハートウォーミングな家族の話でした。

まず、主人公の姉弟ふたりの仲がすごくいい。弟は憎まれ口を叩きながらもお姉ちゃんのことが大好き。ドキュメンタリー映画を撮ると言う彼女のことをからかうでもなく、お得意のラップも入れて、とお願いします。お姉ちゃんがたびたび口にする撮影技法のことなどは結構専門的で、中学生そこそこの子が話すか?という感じでしたが、全体的にアートに対するこだわりが見られ、とてもよかった。

話の筋としては、祖父母の家を乗っ取って殺人をくり返していた精神病患者に徐々に追いつめられてゆく、というサイコスリラーものなのですが、下敷きになっているのは、父親に捨てられた姉弟、そして、親と和解できなかった母親の物語。それぞれが喪失感を抱える中で事件に遭遇し、奇妙なことに、それによって心に負った傷が癒えてゆきます。

精神病患者が家族の絆を取り戻す手助けをする

この映画で面白いのは、精神病のシリアルキラーを、家族の絆を取り戻させるもの、として配置していることです。ただ、頭のおかしい人たち、として恐怖の対象としてのみ描くのではなく、親と子のかすがいの役割を演じさせている。このあたりが、普通のB級映画とは一線を画すところだと思います。

実際に、脚本家は、主人公に精神病患者にインタビューさせ、家出した娘に対し何と言うか、という問いに、「あなたを許す」と答えさせています。そのときの彼女の表情が一瞬正気に戻ったように見えたのは私だけではないはず。監督は間違いなく、病んだ人々を人間として扱おうとしています。

映画が進むにつれて私たちは、姉弟ふたりの家族だけでなく、精神病患者たちの家族についても思いを馳せるように設計されています。暗闇の中にいる彼らにも家族はいたのだろう、それはどんな家族だったのだろう、と。とても心の温かい監督でなければ撮れない作品です。

まとめ:『ヴィジット』はハートウォーミングなファミリー映画を観たいときにピッタリの映画

最終的に、怖さはあまりないけれども、とても質のいい映画でした。監督に関しては前知識を入れるのが嫌なので誰かわからないまま観たのですが、後で確認したところ『シックス・センス』なんかも撮っている有名な監督でした。

一切の無駄がない構成といい、ビックリ要素や銃撃戦で安易に尺を使わないところといい、非常に洗練されていて一級品でした。ヘタなファミリー映画を観るよりよっぽどいいです。

特に好きだったのが素敵な姉弟関係で、これからふたりはどう成長していくんだろう、とワクワクさせる要素満載でした。ハートウォーミングなファミリー映画を観たい人におススメの一作です。

作品情報

制作国:アメリカ

制作年:2015年

監督:M・ナイト・シャマラン

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